教授の戯言

手品のお話とかね。

Axel Hecklau Live Lecture

個人的に好きなドイツのマジシャン、アクセル・ヘックラウ氏がPenguinmagicでライブレクチャーをするとあらば脊髄反射でポチらざるを得まいて。彼の刊行物はグッズもノートもほぼ持っているのですが、総じてお高いんですよねー。商品説明見るとPerforming Rights、つまり上演権も入ってるからなのかなと思うのですが、そのRights落としていいからちょっと安くしてくれないでしょうかw あまり安売りしない、というのもブランドだと思いますし、正直好きなマジシャンなので、私も単に言ってるだけなんですけれど。いや、これが好きではないマジシャンだったら「ぼったくりもいい加減にしてください」とか即座に思ってしまうに違いありませんw

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・3FLY<正式タイトル不詳>
極めてクリーンな3FLY。本当に3枚しか使わず、最後にはちゃんと物体として3枚のコインしか残らない。どこかに処理して終わるわけでもない。

フェイクパスについて、"取る"のか"渡される"のか、動作の主体を明確にしなければならないとかなんとか。利き手が常に"アクション"する側になる感じ、みたいな。解説で「3FLYって、シェルとか4枚目のコインとかがよくある解法だけど、私は違うんだよね。シェルって高いし」とか言ってたんですが、肝心の使ってる道具の解説部になったら「ていうかアンタの使ってるGemini Gimmick、もっと高いじゃないですか、やだー!」と叫びたくなる感じでしたw ただ、彼の使い方は極めて合理的なので、「やっぱ手品師だったら糸と鏡と磁石使わないとダメだよね」とか思ったりしちゃったりします。一時的な処理にすらもその特性を遺憾なく使っており、最初シェルを疑った私は、どんどん誤った想像の泥沼に引きこまれておりました。最後に3つしか残らず、両手をバッチリ見せてくれた瞬間のぐぬぬ感たるや。

「コインって、どう頑張っても小さいので、扱える最大サイズのコインを使いましょう」というのは理解出来ますが、正直ワンダラーは私には大きすぎるし重すぎます。え?似たような手のサイズのポン太さんが、ワンダラーで変態テクをビシバシやってる?なんのことですか?

なお彼が使ってるすぺっしゃるなコインはAuke van DokkumのGemini Coinsです。250ユーロ!ワオ、お高ーい!でも欲しい。シナノクラフトさんとかで作ってたりしないのかな、こういうの。いや、分かってます、ダブシェルセット(断じてあれはトリシェルではない)とか買っても結局全然触ってないです。コインとか実演する機会自体がありません。でも欲しいんだもん。いや買いませんけどw



Newsflash2.0
新聞紙の復活。

ヘックラウが知名度上げたのって、Newsflash(2008)だと個人的には思っております。準備だの何だのはさておき、あの魔法のように一瞬で復活する新聞紙は実に美しかった。2.0は世界各国の異なるサイズ/形態の新聞紙でも出来るようにしたUniversalバージョンなわけですが、原理自体は基本的に一緒。あと"A4のフリップ見せていって、最後に大判ポスターになるやつ"とかはバリエーション。それは個人的に友人の結婚式等で活用させて頂きましたがいい手品です。何より突然演者の体が隠れるくらいのポスターになるのは視覚的インパクトがあり、種の露見可能性よりも強いです。うしろに何か隠れてそうでもいいじゃないか、てじなだもの。



Just a cup
ヘックラウのチョップカップルーティーン。
これは私も買って練習済み。おしゃれな感じで大好きです。チョップカップといっていますが、このカップ自体はレザーカップで(ドイツの居酒屋にはよく置いてあるものらしい。私が行ったときにも確かに見ました)、別に磁石とかは入っていないので、それとは別の仕組みを使うことになります。買った当時は説明がブックレットしか無くて、タマリッツの本みたいに台詞と行動を左右に分けて、全訳してから練習した思い出。

解説時に「DVDでは〜」とか言ってて「おいおい、DVDってなんでやんすか」とか思ってWebページ見に行ったら、いまDVD付いててワロタ。ワロタ……。私の労力を返せ、「くそう!くそう!」(CV:折部やすな) 別売りまでしてるのかYO、しくしく。
カップやダイスを入れていた袋がいつの間にかカップの中に〜、って、トミワンのツーカップ・ルーティーンみたいだなーって思ってたんですが、「トミー・ワンダーは私のヒーローのひとりで〜」とか言ってて納得。そこからの着想だそうで。「ワンダーは全ての労力を、現象をほんの少し良くするためだけに使うんだよ」ってのを言ってて、「あ、いま大体訳し終えたOne Degreeで、ガスタフェローが同じような内容を言ってたな」と思いました。ていうかこの本のコンセプト自体が"ドラスティックなチェンジではなく、one-degree(1℃)の変更がいかに凄いか"みたいなものなんですけども。さておき。

ブックレットの方で一番の謎だったのが、"この袋をいつどのようにロードするかというところだったのですが、今回の彼の実演を見て初めて理解出来ました。youtubeとかにある彼の演技動画では地味に編集されてて、どんなタイミングでロードしたかは分からなかったのですよね。ノーカットの実演見て、納得はしました。まあ、分かってたってのもありますけど追えましたけれども。どっちかっていうとその後のレモンのロードの方に引っかかっておりました。



One Twisted
サイン入りのカードで行うT&R。最後は表裏が互い違いになった形でくっつく。

最後に残るのが不可能物体という、実に私好みの作品。これは商品に詳細なDVDがついていたのでみたままというか。ただ、あとのTWO FUSIONにも、あれ以降に作ったTIPSは加えられていました。

左がOneで右がTwoです。



・カード当て<正式タイトル不詳>
ジョビーのカードカレッジ1巻p.241あたりに載ってるとかなんとか。カレッジ日本語版しか持ってない私負け組。なので、英語版持ってる人はご確認お願いしますw また、赤と緑の薄紙を使ったナプキンローズが実にいい感じの小道具になっていて、ちょっと惹かれるものがありました。やりたい。



・Out of this World Xtrem
観客に赤黒を直感で分けていってもらうが、最終的に全部あたっている。
赤黒の分け方とテーブルなしにする工夫。確かにOotWは通常テーブルを使うもので、その場合見づらいというのもわかります。ヘックラウのはガイド・カードもなく、かつデックの6割位を使うもので、実用的とは思うのですが、いかんせん私が絶望的なまでに例の技法が下手でしてね。あれ手が小さいと結構つらいんですが…。これは英語版レクチャーノートに記載があります。



Two Fusion
T&Rで、観客の名前の書かれた2枚のカードがそれぞれ互い違いで1枚のカードになる。
カール・ハインのハインスタインズドリームから着想を得たそうです。そっちを未見なので見たくなりました。先のOneより、準備が面倒だけど演じるのはこっちの方が地味に楽そうな気がします。何故かは書けませんが。やはり終わった後にサイン入りの不可能物体が残るというのは素敵であります。

・カードパンチ<正式タイトル不詳>
メモ用紙を4つ折りにしてパンチで穴を開けて観客に持たせ、もう1枚で同じく4つの穴を開けるが、穴のひとつを消してしまい、それを観客の持った方に移す。

トマス・ヒアリングというドイツのマジシャンのトリックが元になっているそうですが、所々の工夫は聞いてて楽しかったです。ワタクシ、穴が移動する手品は実は大好きなんですけど、怖くて自分では実演出来ないんですよね。「これホントに現象として成り立ってるんだろうか」みたいな怯えが拭えません。いつか試そう。なんかオススメの穴移動トリック緩募。



・ミュージックデバイスについて
これは手品そのものではなく、音楽に乗せて手品をする場合、いちいち音響さんの手を借りずに自分で、しかもリモコン操作の挙動を見せないようにする方法等についてのレクチャー。そもそも私はあまり音楽に乗せて手品を見せるという機会自体に乏しいのですが、ちょっとした規模のところで演じるマジシャンにとっては有用そうです。彼が使ってるBOSEのスピーカーは音が結構重厚な上に電池式なので、マテの下とかに置いておくだけでいい感じの音響セットになっていました。リモコンについても何社かのものの良し悪し、お勧めか否かを詳細に紹介しており、「試行錯誤したんだな―」って思いました。


・Newsflash2.0
こっちは解説。T&Rを始めた頃にピット・ハートリングから「バラバラのピースをミックスしてる感じに見えちゃってるんだよね。ミックスじゃなくてヒーリングっていうか、直った!って思えるようにやったほうが不思議になると思うよ」的なことを言われたのがきっかけらしい。よく言ってくれましたピットw ホストのダン・ハーランから、「(新聞に関して)obsessive(偏執的)だよね、マジで。紙質や大きさを調べるために世界中から新聞取り寄せるとか、はっきりいってあたまおかしい」とか言われてて笑いました。前にブログで書いた気もしますが、やっぱあのズバッと一瞬で戻るのと、(作り方にもよりますが)戻った直後に演者側をすぐ見せられるとか、Newsflashは傑作だなあと思います。準備が面倒っちゃ面倒ですし、テンヨーの「新聞の復活」なんかはこれより即席的という観点ではよく出来てはいるんですけどね。

ともあれ、英語が第2言語である人、かつドイツの方の英語は聞き取りやすく、ストレス無く見終わることが出来ました。いつか生で拝見したいものです。