教授の戯言

手品のお話とかね。

ビリスとディングル


最近また手品熱が出てきたので、先日見たデビッド・ロス(Vol.8&9)に続き、バーナード・ビリス(Vol.5)<http://www.frenchdrop.com/menu/video/starsofmagic5.shtml>とデレック・ディングル(Vol.4)<http://www.frenchdrop.com/menu/video/starsofmagic4.shtml>を見ました。

BEBEL<https://www14.myssl.jp/www.magichouse.biz/web/tkxcgi/shop/goods_detail.cgi?GoodsID=00000086&CategoryID=000001>のレクチャーノートを読んでいたとき、"Universal Card"というトリックの解説中に「テルテルボムのスナップチェンジ」というのがあり、そこに「バーナード・ビリスの方法です」と言う一文がありました。それを読んで以来、「バーナード・ビリスってどんなマジシャンなんだろう」と思っていたわけですが(ちなみに勝手なイメージではベストに紐タイ、口ひげのバーマジシャン。実際は全然違いましたけどw)、初めて演技を見ることとなりました。

演技を一通り見た感想ですが、正直微妙でした。サトルティとアイディアに関しては好きなのですが、いかんせん怪しいムーブが多すぎます。これは趣味の問題かもしれませんが、私の手品理想は「何も怪しい動きが無かったのに不思議な事が起こる」でして、それにはちょっと当てはまりません。「よくは分からないけど、なんか頑張ってるなあ」という動きが非常に多かったのですね。トップチェンジもかなり直接的というか、一切ミスディレが感じられないのはちと残念。ただ、"Four of a Find in a Box & Quick Square Change"というトリックがあって、あるスートの4枚を卓上に配るが、それがいつのまにかAに変わってしまい、そのスート4枚は卓上のカードケースの中から出てくるというトリック、これは面白かった。消失&移動現象が好きというのもあるのですが、フレンチドロップに動画があるのでご覧いただければと思います。(ほかのに比べて)怪しげムーブは少ないと思います。多分もっと素敵なトリックもお持ちとは思うのですが。



で、そのまま寝るのが悔しかったので、じゃあディングル行くしかない、とチャレンジです。
私が所属しているTCCと言うカーディシャンサークルでも名前はよく出るのですが、実際の演技を見たことはありませんでした。演目表を見てみて"All Back"という、サークルの亡くなったOBの方に見せていただいて非常に面白かったトリックがあって、初めて彼の作品だというのを知った次第です。ちなみに両面裏ばかり印刷されちゃったカードがあるんですーというのを、レギュラーデックで行うある意味くどいギャグなのですが、滑らかな手順で行われるとかなりステキです。
ディングルはクリエイターとしての側面の他にも、カーディシャンとしてかなり名を馳せた方らしく、カードの腕の確かさを感じました。"Universal Card"というレギュラーデック(パケット)で行うワイルドカードと、先述の"All Back"がステキ。終わったかな、と思ったあとに更なるどんでん返しが、といういわゆるマルチプルエンドの先駆けとも言える人だそうで、確かにそんなトリックが印象に残っています。



Stars of Magic シリーズをひとまず4本見て感じたことはトリックの骨太さです。デビッド・ロスのようにまるで読めない感じのものもあれば、演技としては微妙だがこのアイディアを土台にして、ハンドリングをもう一工夫すればかなり面白いんだろうなと思えるものが多かったと思います。時代とともにハンドリングやサトルティが進化するのは当然でして、これらだけ見て冗長だとか方法がミエミエ過ぎ、やっぱりスピーディーなフラリッシュだぜ!とか言わずに、自分で一工夫してみる方が勉強になりそうだなと思いました。o-shidaさんのページ"Close-up Maniacs"で、「古くなるものと古びないもの」というコラムがありましたが、私を含めて最終的にクラシックの方に戻っていく人が多いのはなんとなく分かる気がします。ある程度の経験を積み、知識もついてくると、やはりこのあたりを土台にして工夫しだすのが手品っ子の宿命のようなものなんですかね。尊敬するFred Kapsの言葉に、「クラシックを自分なりに改案するのがよい」と言うのがありますが、蓋し名言だと思います。パフォーマンスが面白い面白くないというあたりは置いておいて、トリックを無理なくかつ不思議に組み上げて磨いていくというのは、大変ですが中々面白い課題ですね。日本にもゆうきさんのような素晴らしい改案の名手がいるわけで、「現象の良さを損なわず」「内部手順には無理なく」「お客さまにも演者が頑張ってる感を与えない」そんな構成をゆっくり考え直してみたいと思った一週間でした。