教授の戯言

手品のお話とかね。

DVD「The real Secret Of Magic Vol.1」


ワタクシ、デビット・ストーンが大好きなのです。コインマジックにほぼ興味の無かった頃から、彼のコインマジックビデオに関しては惚れ惚れ眺めていたくらいでして。10年以上前のコインマジックのレクチャービデオでは、"えらく上品でかっこいい人だなあ、あとキモイくらいうまいね"という印象でしたが、別のテーブルホップのビデオ映像などを見ると、かなりコミカルなこともしており、芸域の広さを伺わせました。現象のビジュアルさでは、私淑するクロティエ師匠と同じくらい好みです。現象がビジュアルですが、マニアック技法はそんなに使わない。だがしかし、一つ一つの基本技法の冴えは凄まじいという、色んな意味で目標にしたいマジシャンです。殆どCPしか使わずに行われるにも拘らず、彼のワンコインルーティン演技は優雅にしてスピーディー。そして追えないという、ああ、カッコイイな!ストーンは!早くVol.2出ないかな!あああ。

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【収録内容】 全19種収録


RESTAURANT(テーブルホッピング系)

HERMES
プロダクションオープナー。卓上のキャンドルに手を近づけると燃え上がり、気付くと手にはバラの花が。一瞬のあとにはそれが2本に分裂しているという、かっこ良さ爆発のオープナー。ストーンがやるからカッコイイのであって、私がやったら引かれる事請け合いです!
ところでFDの商品解説には「女性の観客に演じて下さい。高級ブランド・エルメスを贈られた時のような、素晴らしい気分にさせる事ができるでしょう。」とあるんですが、そういう意味だったんですか。てっきり疾風の如き瞬間芸なので「エルメス」というタイトルかと思っていました。そしてちょっと調べてみると私は何の根拠で風の神だと思っていたのか謎なくらい関係ありませんでした。なんだろう、FFのせいか?


GHOST
デック・バニッシュ系トリック。選んでもらったカードをデックに戻し、シャッフル→オシャレカットで1枚のカードを取り出し示す→ハズレ→そのカードをテーブルに置き、指を鳴らすと選ばれたカードに変化→そのカードをデックに戻し、指を鳴らすと・・・。
これは実にいいバイプレイ。そのあとカード4枚を使う系のトリックに行くのがきっと綺麗なんでしょうなあ。


BONNETEAU + HiERLiNG
レギュラーで行う3カード・モンテから始まり後半はツイスティング、そしてジェミニ・ツインズのような現象、最後にはギャンブラー対マジシャンの構図で話が進むスピーディーな3カードモンテ・ルーティン。
現象が分かりやすいですが、下手にコピーするとやや散漫になりかねないかもしれません。ちょっと長いので、私には前半のモンテ系だけでいいかもしれません。


ATM
ビルマジック。「チップ下さい。あ、いや、これでいいです」と言ってテーブルの紙ナプキンをちぎってまるめます。ライターを取り出し、火を付けるとその紙切れがビジュアルに紙幣へと変化というもの。やっぱフラッシュペーパーは目を引くなあというのと、スイッチの巧みさが見事に融合。


FLASH CARD
カードフラリッシュに近いです。選ばれたカードをデックに戻し、シャッフル。リフル・シャッフル中に一枚のカードが凄い勢いで待機させていたお客さんの手の下に吸い込まれていく早業。
一瞬、観客の掌の下にイキナリカードが出現したかと思ってかなりビビリました。
ちなみに参考にしたものが各説明の後に紹介されるのですが、これは"card as a weapon"とかいう、まんま危険な香りのレクチャーノート(?)が挙げられていました。


COiN GLASS
3枚のコインが一枚ずつグラスに飛行。2枚目の移動でコップを併用したハンピンチェン的なムーブがあってそれも凄いと思いますし、その手前、2枚目がコップに入る瞬間は、「こんな解決案もあるよなー」という盲点を衝かれた形でした。音をうまく使った誤誘導です。何でしたっけ、ミスディレクションじゃなくて。レッドへリング


TRAVELER
オープントラベラーのバリエーションです。最後はKが集まるのねと思いきやなんと・・・。
かなりビビリました(そればっか)。序盤のオープントラベラーが、ストーンにしてはなんか動きが粗く、テントバニッシュもかなりイマイチだったのですが、オチはまさに予想外。確かにオープントラベラーって、飛行している時にフェイス見せないんですよね。盲点でした。Kのラスト一枚がトップグループから出てこない、あの工夫も見事です。


FLASH DECK
「空の手から、デックが炎と共に出現します。カードマジックのオープナーやインビジブル・デックの出現などに最適です。」
とFDの解説がありますがその通り。特にコメントも無いです。


SNOW BALL
カード当て。カットしては一枚のカードを示し外れ、というのを繰り返し、5回目にようやく当てます。それまでに出したカードを表向きにするとフォアオブアカインドが揃っているという感じで、ゆうきともMMLにもカッティング・ジ・エーセスあたりでやったような技法です(スリップカット、ってだけですけど)。ただ、4回外したあとに当てて、フォアオブアカインドが揃うのはイマイチ冗長ではないかと思いました。

 

COCKTAiL (ストローリング・マジック)


ONE COiN
コインを落としてその音で注目を集め、「あなたのかな?」といった流れからの観客への絡み。まあ実際こんな風に第一歩をやっているかどうかはわかりませんが、"手品を見に来た"わけではないお客さんをどう引き込むかの参考になります。私はプロでもパフォーマーでもないので、こういった自分から見せに行くことはあまり無いとは思いますけれども。


HALLUCiNATiON
テーブルホップらしく、セットも簡単、終わった時にはリセットされているという優れもの。ロープマジックってハサミを使うものと使わないもの、それぞれ2種類ずつ位はマスターしておくべきだなと思う昨今です。


WATCH OUT
3枚のコインが、マジシャンの手からお客さんの手へと移動するもの。ラストの一枚の登場がかなりステキ。もっとも彼の以前のDVD、Coin Magicでほぼ同様のことはしています。どちらかというと袖を検めるあのギャグが、このルーティーンでお客さんの目をひきつけるいい要素だと思います。ていうか爆笑でした。なんですかあれはw


CROSSED
Do as I doトリック。腕をまっすぐ伸ばして、肘あたりで交差させ、右手を反時計左手を時計回りにしてからがっちり指を組む。それがお客さんは「逆」から「順」に戻せませんが、マジシャンには出来てしまうという。なんか言葉で書くと難しいですが、人体以外のギミックも要らず、いわゆる「裸でもできます」的な手品です。アンドリュー・メイン辺りが得意そう。


CiG CLEAN
タバコの消失、出現。理屈では分かっているのですが、正直何度も「今ホントに持っているんだろうか」という不安に駆られるくらい消えてます。この辺の気持ち悪さがストーンの真骨頂。


CARDS
カード・マニュピレーション。「バックパームを使わず〜」という部分が色んな紹介サイトで書かれているのですが、ステージカード経験者としては「バックパームが無いから簡単」というわけではないと付け加えておきたいです。テンカイパームをベースにして彼のルーティンは組まれていますが、慣れてないこともありますけれどもこれはこれで凄く難しいと思います。何よりカード経験者の私が、恥ずかしながら追えない箇所が数箇所ありました。これだからストーンはステキです。ラストのカード吐き、吐くまでホントに何も持ってないように見えました。たまりません。この一連の動きを見るだけでも、このDVD買って良かった。


VOiLE ROUGE
スタンドアップ状態で行えるカラーチェンジングデック。面白いですが、そこまで感銘は受けませんでした。


SPONGE
FDの解説にもありましたが、ゼロからのロードが見事。パントマイム的な動きをしていますが、両の手がカラなのは誰の目にも明らかな状況下、出ますね、スポンジ。解説のサムパームバニッシュ、分かってても不思議。ルーティンその物は王道手順で、変なことや巨大ボールの出現などはしません。


NAPKiN
ナプキンをハサミで切ってそれが復活。「ハンカチ系マジックか」と思いきや、ハンカチを取り去ると飲み物の入ったグラスの出現。ステキに引っかかってしまいました。Flicking FingersのThe Movieにあった、メガネふきふき→レンズが無い→観客笑う→拭いてたシルクを取り去ると飲み物登場→私びっくり、というように、私は飲み物系マジックのミスディレに異様に弱い気がします。なぜだ・・・。
話戻りますが、この復活は実は微妙に復活してないので、使いどころとしてはちょっと難しいと思いました。まあ100円均一でたくさん買ってこいって話なんですが、ウエイターさんから借り受けたナプキンでやるのはちょっとw


BiTE ME
オフィシャルサイト動画「TEASER 02」です。堂々とボトルをセットするシーンから始まるなど、ある種種明かしちっくなのです。使用するシルクはあくまでコインマジックに使うものだと演技を見ながら勝手に思っていたら、最初に仕込んだボトルがラストにいきなり出てきました。最初に仕込みを見ていながら見事に引っかかってます。


総評として(というか単に全部見て、の話ですけど)、
ストーンは、テクニックは言うに及ばず、トリック以外の部分、タイミングだとか視線の誘導だとか、更には意識の誘導だとか。その辺のセンスが実に鋭いと痛感しました。なお解説はサイレントでややあっさりめ。もう少し細かく解説が欲しいところですが、その辺は聞いてナントカなるもんでもなさそうですね。不断の努力があれを可能にするのでしょう。しかし指長いし、手もでかそうでイイなー。・・・。しくしく。トリックレクチャー以外の「マジシャンとして」「手品をする際に心がけなければならない」注意点の解説が占める部分は結構長いのですが、いい勉強になりました。