教授の戯言

手品のお話とかね。

RSM Vol.2

がちゃばむっ どすどすどす
「シスター!シスター!」
「またアナタですか。今度はどんな散財をされ」
「出ましたよ!ストーンの、アレ。Vol.2!」
「なっ!」
「見つけたんですぐ買っちゃいましたよ!」
「ぐ…アンタかー!アンタが買ったから在庫切れだったのかー!ユーロ高いから欧州に注文するの嫌だったのに!アンタのせいだ!うぐぐぐぐ、アンタはアタイのもっとも触れちゃいけないものにふれてしまったのさ」
「し、しすっ、ナニユエにスケバン口調…げぼっ、首が…っ、もげ…る」
「"マジックより先に神はこの世にあった。心はジーザスに捧げても良い。だが貴様らのケツはマジックマニアのものだ"と例の軍曹も仰っておられます。えいっ、天罰天罰(炊きたてのごはんを杓文字で襟元から押し込む)」
「うわ、あっつ!なんか地味ですっごく嫌だ、この拷問!あっついし!なんか地獄の司祭っぽくなってきましたんだぜ!?ギャワー」
「はぁ…。届くのが待ち遠しいです。が、手近で見た人間が来るとは何たる僥倖。…フゥ…。では…"読む"としましょうか」
「え、"読む"…?」
「ヘブンズ・ドアー…ッ!」(突然登場する怪しい少年)
「あ、新手のスタンド使いーーーーー!?な、何だこの少年は、あ、えええええええ!?私のっ、私の皮膚が!本のようにめくれて、中に文字…これは…私の記憶!記憶が書かれているのか…っ!?ああっ、さっき見ていたDVDの内容が!」




新聞を読んでから戻ってきて上記の書きかけを読み直して、「やっぱあほだこいつ」ということを再認識しましたが、あえてそのままにします。どう続けるつもりだったんだ、2時間前の私。

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■ David Stone 「The Real Secrets of Magic Vol.2」



それはそれとして待ってました!ストーンのThe Real Secrets Of Magic Vol.2!"クロース・アップ・マジックで生計を立てる"のをテーマに、15種類のルーティーンと各種アドバイスが解説されています。なお購買層を見極めたのか、TIPSの部分に日本語の字幕もあります。どうせつけるなら演技の部分とかも全部つけたらと思いましたが、まあ不要といえば不要か…。



全体を通してそうですが、「プロとして、いかにお客様をマネージしつつパフォーマンスをするか、それによっていかにお金をもらうか」、というのに主眼が置かれているので、どれも実践的なトリックなのは間違いありません。私にとってはその辺のTIPSが多少"現実的過ぎ"というきらいもあったのですが、トリックそのものに関しては素早く、かつビジュアルです。マジックそのものを見たい・知りたいという観点は何も阻害しないと思います。Vol.1の方が花を出したりしていたのでより華やかな感じですが、Vol.2も現象の鮮やかさはお見事でした。やっぱストーン良いわ…。

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・FRENCH KISS
カード to 某所。追えないことは無いですが、わずか1分足らずの間に非手品人には思いもよらない移動が起きます。もう少し勿体をつけたものを以前Simon Lovellがやっているのを見ました。コメディタッチで行くのであればロヴェルのように時間をかけてギャグも織り交ぜる方がいいかと思いますが、本DVDではテーブルホップの"つかみ"として行っているもので、「短時間」に「注目」をさせるという、二つの観点を重視して組まれています。



・SAM CARD
スナップチェンジ。そこにいたるまでのカード捌きがやはりニクイ程カッコイイ。それはそれとして最後に驚く女性がストーンの左やや後方にいるのですが、あそこにいたらスナップチェンジはどう考えても丸見えなんですが、いいのだろうか。むしろ秘密を知ってしまって驚いているのか…等と邪推w



・CA$H CA$H
カードマジックからコインマジックへのつなぎにいいでしょう…ということですが、素で声をあげて驚いてしまいました(その1)。クライマックス、カードを引くときに微妙に一瞬スローをかけたりしているところがこのシリーズの映像スタッフのセンスの良さを感じます。いや、レクチャーとして必要かどうかはともかく、劇的でカッコイイのです。



・SIGCOIN
はい早速声をあげて驚いてしまいました(その2)。わずか15秒の間にこれだからこの人は。コインとシガレット、そしてミスディレクションという、ストーンの十八番詰め合わせセットです。フラッシュコットンの燃え上がりからラストのコイン登場まで流れるような手順。



・DUNCAN
リアル金魚だ!www 水の入ったお客さんのグラスにぽちゃん…って。テーブルホップの際にどう回収・再利用するのかが知りたい。Tipsで「お客さんの食器や料理、ナプキンなどに触れないようにしましょう、迂闊に色々借りないようにしましょう」って言ってませんでしたっけw  



・RESET
「あほだwwwww」 声をあげて驚いてしまいました(その3)。「俺は黙っていろ!」きゅいーん(ギアスの音) 
タイトルはリセットなのですが、リセットとカードトゥポケットの複合です。畳み掛けるようなオチも良いのですが、最初のリセットの綺麗さに嫉妬。あの2枚をくるくる回すテク、かっこいい上に説得力あるなあ…。二転三転するクライマックスがたまりません。



MULBERRY
4枚のコインプロダクション。David Stone Vol.2(Vol.1かも)でもやっていたタイプのトリックですが本当に綺麗。絶対何も持ってないよという状況から出ます。しかもストーンの示しはぬるり、というよりスパッという感じなので実にカッコイイ。マルベリーってオーディンスフィアの食材であったので架空のものだと思ってたらクワの実なんですね。…ところでなんでこれのタイトルはマルベリーなんだ…。



・MISGLASS
声を以下略その4。ゆうきさん的にいえば「ここで既に仕事が終わっているのです」的な。この類のカードマジック、自分もよくやっていたせいで幻惑抵抗がついていると思ったのですが、完全に騙されました。なんというか今まで見ていて、色々とオチを明かすのが惜しい。知らずに見て楽しんで頂きたいなあ…。まあタイトルから類推できそうではありますがw カードとグラスといえばアレしかないですよね、「Ladies' Looking Glass」!(嘘)



COCOON
4枚のコインプロダクション。綺麗ですがまあ実に普通でございました。



・BILLSWITCH
クラシックなビルチェンジ。やはりビルチェンジは良いです。はからずも、「飲み会の会計時に偉い人から万札を問答無用で頂くため」に考案した自分のビルチェンジと、発想の手法が同じでした。まあありがちな発想ではありますが。ところで演技では20ユーロを借りてやってたんですけど、欧州ってチップで20ユーロとか払うものなんでしょうか。結構な額な気がするんですが…。私が貧しいだけ…?



・RINGBOX
リングトゥボックス。借りた指輪を鍵に変化させて、その鍵で小箱を開けさせる、というのはロジカルリーズンがしっかりしていて良いですね。



・SOUSBOCK
お客さんのビールのコースターからアレがずるりと…。準備も不要で非常に実戦的という印象。ただお客さんのコースターを破りますので、可能であれば予備のコースターを用意できたら尚良いのではないかと思いました。紙コースター常備の場所にそんなに行かないですし、たぶん私がやることは無い感じはしますが。



・WILLIAM
このDVDの中ではかなり簡易な部類に入ります。お客さんのカードだけが裏向きに現れるトリックなのですが、準備も特に不要ですしスタンドアップで出来るステキ手順。よくよく考えると非常に簡略なトリックなのですが、デックの保持の仕方からハーフパスとか使ってるのかと一瞬思いましたw
 
ところで「ストリートマジシャン」の商品紹介がどうもなんらかの翻訳ソフトを使っている気がするのですが、「 - 痛い!大変簡単で早いトリックで、大変意地悪です!」 …原文を見たい。痛い…?



・GUESS CARD
お客さんAの名前やら色々を聞いて紙に書き、お客さんBにその紙を渡します。その後Aの所持金を聞くため財布やら小銭やらを出して合算してもらうのですが、その額はBの持っている紙に既に予言されています。声はあげないにしろ不思議でした。メンタル系に疎いので王道なのかマニアックなのかすら分かってませんでしたけど。



・ENCORE
はい最後の最後でまたやられました。声をあげて驚きましたFINAL。
Vol.1でもあったコインマジックをしつつのボトルプロダクション。昔、同様の手法でふじいあきらさんに完全に引っかけられたことがありました。このミスディレクションは本当に強力です。私はといえば2・3度しかやったことないのですが、私程度のレベルだと気付かれやしないか本当にドキドキです。
最後には違ったものが二つ出てきます。それはそれで驚きなのですが、ただ、お客さんのナプキンを借りる、というのであれば、衛生概念上あれを出すのはどうなのかなあ、と思ったりもしましたが。

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セオリー
中で印象的なのは、やはり「お金を貰うプロとして」のコメントの細かさと重み。特にテーブルで貰うチップについてなど、下手をするとかなり泥臭くなるようなレベルまで話をしています。日本と欧米ではレストランアクトの文化も違うので一概には比較できませんが、チップを貰うというのが日常的な欧米では、やはりあのくらい「チップを貰うこと」に意識を持っていかないといけないのだなあと。私の中では華やかなイメージしかなかったストーンなのですが、こういったことを積み重ねてきたのでしょうね。マジックをするということに関して少し"夢見がち"な私にしては、若干現実的過ぎというのが正直なところなのですが、マジシャンもこれで生計を立てているわけなのでなんともいえず。良くも悪くも現実を見た感じがします。



他にも酔客や"困った客"への対応についてもコメントあり。ただ、極端な例えとはいえ、これの例で出てきたような"困った客"がいたら私は謝って立ち去りますw 「それカード2枚だよな、弟が手品やってて知ってんだよ」とかもう、泣いちゃうかも(私があまりダブルリフトを人前でやらない理由)。「The Movie」の解説編にあった、マジシャンの手順をイチイチ「ストーップ!」って止めてばらしていくという方式も(こんな客いたら)ひどすぎると思いましたが、ストーンの方もそれに劣らずひどいお客様ぶりでした。もっとも前作に引き続き、ラストには怒りに我を忘れたマジシャンの恐るべき反撃が待っているのですがw て言うか口元血まみれで「ハンニバル」のレクター博士っぽくて怖いよストーンw こうしてみると、マジック愛好家向けにやるってのは"色々わかってる客"相手なので実に楽そうです。「パームがばれないのは、単に礼儀正しい客を相手にしているからに過ぎない」とは(手品っ子には)おなじみダイ・ヴァーノンの言ですが、彼ほどの碩学が言うと重みがありますね。


以前二川さんに「やはり海外のプロは、技術もそうだけど演出含めて手品というパフォーマンスを本当に深く考えているし、日本人はその辺まだまだ改善の余地ありと思う」と言われましたが、華やかイメージのストーンでそれを体感したのはちょっと意外でした。

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なお、前作でストーンに頭突きを食らったり妻を消され、今作では「ヘイ、マジックボーイ!ウサギでも出してみろよ」→振り向くとにんじんを持ったウサギの着ぐるみがぬぼーっと立っている、という恐怖体験をしていたシュヴァリエさんと、今作でマジシャンに嫌がらせをした挙句に(多分)殺されたり、堤防で寝ていたところをストーンに突き落とされ(多分)殺されたりしていたベルトラントさん(どうも欧州では有名なアート系会社のCEOらしいのですが)の演技がステキでした。スプラッタシーンの撮影メイキングはこれまた爆笑でございます(マジックには全く関係ございません)。