アロン・フィッシャーという、殆どカード専門のマジシャン、いわゆるカーディシャンが来日しています。いやしくも”カーディシャンズクラブ”を冠するサークルに所属している身としては、やはり参加せんとイカンだろうということで参加してまいりました。
参りました。
失礼ながらですね、あんまり期待していなかったのです。大体想像つくと思いますが、技術を売りにする方のレクチャーは、観る分にはいいのですが、マスターするには程遠いのです。しかもカードオンリーのレクチャーですからね。
「ネタは盗めても技術を盗むことは出来ない」とか、実に言い得て妙な謹言があったと思いますがまさにそれです。そんな理由で私はゆうきさんのような、クレバーな手順を組んで下さるナイス講師にお世話になることが多いのですが。
このレクチャーではスライハンド以外の部分、たとえば笑いの部分も非常に多く、とても楽しいレクチャーだったと思います。彼はまだ31らしいのですが、若いせいもあって非常にフレンドリー。とまあレクチャー受けていた時には、よもやその後にあんなことになるとは想像もつかなかったのですが。その”あんなこと”も、今までの打ちのめされ方とは、正直次元が二段階くらい上だったような気がします。とりあえずはレクチャーの備忘を転記。
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レクチャーアウトライン:
00_Impossible Transformation
カラーチェンジ。むちゃくちゃ鮮やか。アンドラスのバリエーションですが、これは開会前に「こういうビジュアリティ溢れるマジックもやるけど主眼は違うからねー」という喋りの一環でした。
(この間に”探偵カード(ハーフパス?)”とメモにはあるんですけど、自分でも何のことか分かりませんw)
01_Search and Destroy
離れたところに配置したデック中の2枚のQが、徐々にお客さんの選んだカードに向かって狭まっていき、最終的にはお客さんの手の中でぴたりと捕まえる。
言われてみればその通りの手順なのですが、先入観のせいもあって追えず。そんなに技法を用いるものではないのですが非常にアイポッピングな演目。「スポンジボール同様、お客さんの手の中で起こる不思議はいいものです」とはフィッシャーの弁。
02_New Deck James
お客さんの指定したカードが、スプレッドしたカードのど真ん中にあるインディケーターカードを元に数えていくとそこから出てくる。
彼の演技全般にいえるのですが、デックスイッチだとかパスだとか、その瞬間が完全に観客の意識の外にあります。解説のときにもスイッチを見逃す有様w ものすんごい変な表情でやってくれてるのに。
03_The Ultimate Bluff Shit
ブラフパス。「ここに返して頂きました」のディスプレイが非常に説得力がある。ただ、ブラフパスの性質上、返してもらった直後にドッキングを行う必要があるため、あのディスプレイになったときに一言「ここですね」という感じでデックの中ほどを指差し、お客さんに直接意味・場所を説明してから閉じる方が心理的な説得がしやすいかも。「Decks, Lies, and videotapes」にもブラフパスの解説がありましたが、応用範囲が広いのに使う人がそこまで多くないのは、やはり心理的負担のせいでしょうか。私はチキンなので正直者なので使えませんけど。ブラフパスの原理を知ったとき、確か大学生だったと思うのですが、衝撃だったなあ…(遠い目)
04_Secret Weapon
52枚が印刷されたギャグカードがありますが、あれを一段階進歩させたもの。いつものギャグの後でてきとーなカードをてきとーに分けてもらったデックの中に挟むと、さっきのギャグカードから1枚のカードが消えている。いや、消えているのではなく移動している?…まさかこの両サイドにあるカードまでもが予言…。書いているうちに現象マル記述だったので少しぼかしてみたら、今度はわけがわからなくなりましたw 迷って迷って買わなかったのですが、二川さんに会ったらつい残ってないか聞いてしまいそう…。とても面白いマジックの割に、トップチェンジとDLしか使いません(かなり強力なカバーを伴うものなので、名前から想起されるレベルの変態テクは不要です)。
<休憩>
05_Lee Asher’s 3 FLY
盟友・リーアッシャー考案のポーカーチップによる3FLY。
「コインは専門外で、頑張ってみたんだけどなあ」と仰ってましたが、さすがにプレゼンは堂に入ってました。色鮮やかでソフトコインの特性もあるのであれはあれで面白そう。私は人前で3FLYをする勇気は無いので見送りましたけれど。ただフィッシャーさん、右手のフィンガーチップドロップはきちんと指を閉じないとイカンですw
06_Impossible Transformation / Revolution No.9
最初に見せてくれたカラーチェンジ。テクニックの名前が前半で、後半がトリック自体のタイトルと思われます。まあそんなことは置いといて、解説の冒頭のフィッシャーさんの台詞。
「この場の練習でマスターして帰ってもらいます」
だって。こんな無茶苦茶なこという人、上司以外で始めて見たw 守屋さん風に言うなら「ワタシ、大好きでございます!」ですけどw
非常にゆっくりと行うことで、お客さんの興味とトーンダウンを掌握するプレゼンテーションの紹介。こういうTipsは非常に勉強になります。
「10秒止める」の後の「wait 5 seconds」を聞いてファフナーの一騎が帰ってくる回の総司の名台詞「…5秒待て」を思い出していた私。総司くんいい子だよなあ…。
07_Gravity Half Pass
彼のハーフパス。この時50センチくらいの距離で見たのですが動きがありません。既に終わってました。終わってたのは私がぼけっとしていたせいではなく、速い以上に動かないのです、左手が。会場の中で何度もやっていましたがアッシャーツイストを実演して回っていた、数年前のアッシャーを彷彿とさせる状況。
以前お会いしたカナダ人のフィッシャーファンは「ヤツの左手に気をつけろ(個人的意訳)」と言っていたのですが、これがまた全然怪しくない。フィッシャーは左手の緊張感オーラを絶(ゼツ)で消せるようだ、と表現させて頂きたい。「フィッシャーもそんなに手は大きくないみたいだけど、これはまあ手のでかさとかも関係する、(私にとっては)観賞用技法だな」なんて思っていました。レクチャーの最中は。いや非常に綺麗で、動きでカバーしないため技法のタイミングがまるでつかめません。それゆえに先述の通り気付いたら終わっているわけで。
フィッシャーが「はっきり言えば、お客さんの見てない時には、こんな感じで堂々とパスなんか出来ちゃうんですよ」と言って、あからさまにひっくり返していたのですが、通訳に気をとられていた二川さんが素で見逃していたのがいま思い出しても笑えます。「え、今やったんですか?あ、ちょっともう一回やってもらえます?」二川さん、まるでサクラの如くにツボを外さないのはさすがとしかw
08_Long and Winding Trick
説明が難しいですね。4Kをポケットに戻してからデックに4Aをバラバラに差し込み、それを見つけると言うが全然違うカードが4枚。それぞれの数字分だけ配っていくとそこからKが出てきてしまう。卓上に残った山のトップをそれぞれ開けていくと4Aが出てくる。
非常にダイレクトな、むしろ手品をやらない人が真っ先に想像しそうな方法でKのリターンは解決されます。しかも悪魔的なスイッチで。だーまーさーれーたー。なお、流れ的にアマーのレクチャーにあった、こういうエフェクトのあとに全てのスートが揃う、とかやるのかと思ったのですが、それはありませんでした。Kのリターンで「あ、あれ?」となるので、折角ならラストに各スートが揃うという、ルーティーンに変えても客受けしそうです。なんと言うか素直に「うっわ、ずっりい!」とか思ってしまいました。中学生か、私は。
09_Helter Skelter
カラーチェンジ入り”Revolution No.9”のような。さっきレクチャーを受けたやつかと思っていたら、色変わりでこれまた綺麗に幻惑されました。チェンジ部分はともかく、全体ひっくり返す際にはやはり先のパスが用いられるのでコテンコテンでした。ハイ。
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終わったあとはレクチャーノートにサインして頂いたりして散会となりました。そういえば私は、マジシャンに会うたびにハートのA(たまにダイヤ)にサインをねだると言う、まあ手品っ子以外から見たらキモイ以外の何ものでもない奇癖を持っておりますが、これやるたび、微妙にそのデックを使いにくくするのですね(Aを別の場所に移しているので数が合わないデックが出来る)。
で、最近気付いたのです。「ハートのAのフォーシングデックを買えばいいのよ」と。で、注文してたんですけど、今回には間に合わなかったっす…。あと今になって思えば、サイン用にワンデック用意して、54枚のバック全てに別のマジシャンのサインがある、と言う方式にしたほうが無駄がなかったなと反省。ハートのAの数だけ、どこかに消えていったデックがあるということです、私の場合。ああ、ブランクフェイスを買っても良かったかな。うひっ。