教授の戯言

手品のお話とかね。

少佐似のマジシャン

■ Stellan Lagerkvist 「It is about Tea Time!」

全 く存じ上げなかったのですが、スウェーデンのマジシャンのDVD。自己紹介シーンではステラン・ラゲルクヴィストとか聞こえましたが、名前が難しいw 本業は別にあるとの事ですが、そっちはそっちで本業の単語が分かりませんでした。手品については久方ぶりに超・当たりでして、お下品な振る舞い+ハイレベルの技巧連発で幻惑されまくりです。外見は「小太り」「金髪」「メガネ」。分かる人には一発で意識共有できる例としては、そう、「HELLSING」のあの少佐殿にクリソツな風体w(画像参照) 声が飛田さんとは似ていなかったり、「諸君、私はマジックが大好きだ」とか言い出さなかったのが残念でなりません。…となると聞き取れなかった本業はあれか、総統代行閣下か!「最後の大隊」の大隊長殿か!フューラーとかバタリアンとか聞こえなかったんだけどなあ。余談ですがネットで少佐の画像探してたらまた読みたくなりまして、本棚から引っ張り出してみましたが、平野さんはやっぱ良いなあ…。しかしどう完結するのだ、これ。セラスが幸せになれますように。さて。

部 分的には苦笑いありとしても、全体を通して過剰なほど不思議。タイトル通りコンセプトが「ティータイム」なので色々飲み食いしながら進みます。ビル・マローン以外で諸手を挙げて許せる(小)デブキャラですが、エレガントスタイルの方にはちょっと不快なタイプかもしれません。演技を見終わって彼の体型の原因が分かった気がしました。演技途中でもの食いすぎです、彼w 演技は全編ホテルレストランの一角にて、たまに立ちますが概ね座りスタイルで演技は進みます。

う ちの姉上はテンション高い人が苦手なのですが、たまたま来た時一見して、「ああ、私こういう人と食事とか絶対イヤ」と言うコメントでした。手品として不思議かどうかは不問ですか、ひどいや。せめて演技まで見てくれれば絶対凄いというと思うんですけど…。ただ先述の通り、好き嫌いがかなり分かれそうなキャラなのは間違いありません。不潔っぽいわけではないのですが、同じ小デブでも人畜無害そうな小デブではなく、なんか悪っぽさを感じさせるオーラなんですよね、この人w 

そ れはそれとして、作品集として見た時には恐ろしくレベル高いです。・・・でもそういう手品的観点は正直どうでも良くて、私としては久々にキモくて楽しい人を見つけた事で十分です。誇張抜きで今までに見た手品DVDで3指に入るくらい不思議。日本に来ないかなあ…。「よろしい、ならばマジックだ!」「マジック!マジック!マジック!」そして最後の52デックエフェクトは本気で目の前で見たい
です。

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・Card in Plastic Bottle
選んだカードを破り、その破片を持っていてもらうが、残りは消えてしまう。空のペットボトル(ラベルもなし)を取り出し、手で覆うとペットボトルの中に残りの部分が出現。冒頭、ちょっと複雑な破り方をしていたにも拘らず、観客の持っている破片と切り口が一致する。

のっけから驚きました。ラベルをカバーにするタイプはいくつか知っていたのですがこれは明らかにカラといいますか。資源ごみに出すときのような状態のため、かなり公明正大です。ギミックそのものは知っていたのに、使い方と説得力の妙に感激。



・Sig thru Card
観客にカードのフェイスにサインをさせる。手でカバーしつつ息をふきかけるとサインが消える。カードを裏返すとバック面に観客のサインが移動している。


これは凄く面白い。材料の準備+若干高度なテクニックを要求されるのですが、見た時は声を上げて驚きました。この現象ありそうでなかったなあと言う印象なのですが、他にやってらっしゃる方、いるのかしら・・・。
あと全然現象とは関係無いですが、autographとsignatureの違いは何なんだろうと思って辞書を引いてみたところ、autographは比較的有名な作家や芸能人が自著やブロマイドにするもので、手紙や書類などにするものはsignatureだそうな。



・BF(Backward Flow)
紅茶をすすったあとでミルクをいれてミルクティーに。しばらく演技を続けたあとでカップの中を見るといつのまにかストレートティーに戻っていて、ミニパック式ミルクの封も元通りになっている。


表現が思いつかないのですがあれです、喫茶店にあるミルクと言うかクリームの、…小さな白いプラスチック製容器のやつ。関西で言うコーヒーフレッシュ。濁った液体が元通りになると言うメインの現象自体が私の好みにぴったりあう上に、開封したミルクがいつのまにか元通りと言うのがさりげなくて素敵。若干の準備は必要ですが、一旦あけた容器を元に戻す部分もかなり強力なミスディレクションがきいていて、完全に幻惑されました(視点を変えると、その"復活部分"だけ演じるのはちょっと難しそう)。



・This is Threat/d (Performance only)
先述のミルクを入れたあと、「ミルクティーを作るときには、ミルクを先にいれるべきかあとにすべきか」のような話をするが、観客に語りかけている演者の横で、シュガーポットが開いて砂糖が二つ浮かび、カップに落ちる。次いでティースプーンがスルスルと宙に持ち上がり、(若干ぎこちないが)かき混ぜた後、ティーソーサーに落ち着く。


スレッドといえばコパンのデモとか、もう信じられないような現象起こしてましたけど、こっちも負けず劣らず、タイトル通りの脅威を感じさせる演技でした。でも全般的にあほっぽい。そこがいい。角砂糖がちょい高めからカップに落ちてお茶が若干飛び散り「あおっち!」とか2回繰り返すあたりも好きです。不思議現象に対する観客の反応を無視して、延々と紅茶薀蓄を語り続けるシュールっぷりもポイント高し。

「配置から動きまで全部解説すると凄く長くなるのでしませんけど、スレッドは5本、卓上の4箇所(ティーポットとかカップなど)に中継支点を設けている」らしい。いや、もう絶対自分でやろうとは思いませんけど、彼が指で示す配置図を考えるとかなり複雑で「こいつは特殊工作員か爆弾魔か」と言うような張り巡らせ方でした。肘と膝も使うよとか言っていたのですが、あんなデリケートな素材、よく膝なんかで操作できるなと素で感心。「手首から先、特に指は精密なスレッド制御には欠かせないのが常識だが、逆に動きも目立つので自分は殆ど使わないようにした」ような事も言っています。キモいキャラの割にこういうストイックな部分との落差がたまりません。



・Dizzy eyes
メガネのレンズのカラチェン。手で覆うのですが、透明から黄色→赤とメガネのレンズ部分が2回変化。


拍手のあと、「おお、世界が血まみれだ」と言ってから赤レンズのメガネを普通に外してケースにしまい、内ポケットから全然違うノーマルメガネを出して何事も無かったように装着するんですが、あまりのあっさりぶりに噴きました。なんでしょう、この微妙な空気はw 

ギミックはほぼ想像通りの材料でしたが、やはり若干面倒な工作は必要。更に彼のようにロードとアレの処理がかなりスムーズに出来ないと不思議に見えないような解法でした。と言うか、これを不思議に仕立て上げた彼はやはり只者ではない気がします。また、"スリービングしたあとで腕を下げてもブツが落ちてこないギミック"は初めて見たんですが、合理性に唸ると同時に驚愕しました。別にマジシャンまで騙さなくてもいいのに…。なお、各種ギミックの都合上、ノンフレームメガネでは出来ません(多分)。



・Finger Pinch
ロープのカラーチェンジ。手に握りこむタイプではなく、指先でつまんだくらいしか隠さない。つまんでしごいた部分から白→赤に変化。


最初、「片手で結び目が作れるかな」という事で、右手でロープの端をつまんで振り回して結び目を作る普通のロープマジックをやっておりました。珍しく普通だなと思ったら上記のカラチェンが不意打ち的に行われます。「メガネは普通に戻したはずなんだけど、まだ一部赤く見えるよ」という事で、ちょっと前のと関連性を持たせていたのが泣かせます。解説聞いて「よく考えるよなあ」と思うのと同時に、この解法は全くの想像埒外。解説聞く毎に感激するDVDってのも凄い…。



・Another Sandwich Method
観客がカード1枚を選ぶ。選んだカードを2枚のJが捕まえてくると言う典型的なマジックがある事を説明、観客の目の前でそれを堂々とジャックにはさみ「こんな感じで捕まえたんだ、ホラネ♪」的な事を言う。が、指を鳴らした次の瞬間、ジャックの間からカードは消失。「ジャックが駄目な時は別なのが捕まえるんだよ」と言って卓上に置いてあったサンドイッチを開くとそのカードが出てくる。


ロード方法の賢さとか、スチールの見事さは別にして、マヨネーズべっとりのカードを出してくるのはどうなのかw そしてそのあと何事も無かったかのようにそのサンドイッチ食うのはどうなのかw



・Cups and balls and so on
ベタなカップアンドボール。と思いきや、ラストでカップのうちの一つから大玉が出て(まあ普通)、もう一つはソリッドカップで(な、なにい)、最後の一つを持ち上げるとほぼカップと同じ大きさの皿載せのプリンが出てくる(また食うのか!?)。そしてやはり食べる。


ソリッドカップの存在に最後まで気付きませんでした。普通にうまいです、この少佐。「プリンをおいしく食べるために、ボックスには保冷剤を入れておけ」「プリンロード用のカップはきちんと清潔に」とか、変なこだわり満載。なお演技では、胸ポケットから普通にスプーンを取り出していましたが、解説時に「実は使っていたウォンドの先にはねじ穴が開いていて、そこに装着可能なスプーンヘッドギミックも持っているんだ、ほら」とか妙な自慢が。ウォンドの長さのスプーンって、絶対使いづらいと思いました。ただ、解説聞いたあとでも、プリンロードはともかくソリッドカップを使っているように全く見えないのは本当に凄い。



・Any Card at Any Biscuit
観客Aが任意のカードを指定。観客Bが選んだクッキーを割ると中から4つ折のカードが刺さっている。広げるとAの指定したカードである。


クッキー缶を出してきて、「これ54枚入りでね」とか言い出した時点でもう嫌な予感はしたんですよw 去年のアマーレクチャーにあった"Bill from Peenuts"にもう一つ、"Any card"部分を解決するギミックがあり、加えておなじみのギミックを活用。ともあれ、

※クッキーへの仕込が恐ろしく手間
※彼の言う「スウェーデンのスーパーならどこでも売っている、内部にちょっとした空間のある缶クッキー」とやらの入手が面倒
※あらためとして適当に2枚割り、中身に何も無い事を確認した後、必ずそれを食べる(「これをやる人は食べ物を粗末にしてはいけない」とかギャグなんだかまじめなんだか判断に苦しむコメントありw)

と言う3点が私のやる気を確実にそいでいますw しかし現象自体はおやつタイムの一幕っぽいですし、これ普通の家族パーティーみたいなところで小学生相手とかにやれたら、その子には一生忘れない不思議な思い出になるだろうなあ・・・。だって適当に言ったトランプが、市販のクッキーの適当な一枚割ったら出てくるんですよ。ロマンです。



・Reversible Slide
ポケットに手をいれて袋部分を引き出すとなぜかズボンのすそがどんどん上にまくれていく。ポケットを戻すと元に戻る。その後股間に手を当てて撫でるとチャックが消失。後ろを向くと、お尻側に社会の窓が。観客爆笑、私も爆笑。


こう言うばかばかしいやつ大好きw ただ、チャックが跡形もなく消えうせた直後に手のひら部分を改めるシーン、ここはきちんと不思議。彼の演技は全般的に不思議なのにも関わらず、不思議よりあほっぽさが前面に出ているのが特徴です。素晴らしい。
「ありがとう、ちょっとお尻がごわごわするので着替えてきます」ってw しかも戻ってきて「大丈夫、チャックはちゃんと前にあります、ほら」とか言って上げ下げするのはどう見ても余計だと思ったw ここまでギミックズボンをずっと前後逆向きに履いてたであろう事実に涙ぐましさを覚えました。



・I am The Finest Collector (Performance only)
「実は私、手品に使う道具をコレクションしてましてね、ちょっと自慢したいんです。よっこらしょっと、これなんですが。何が入ってると思いますか?」と言うコメントの後、テーブル上にそんなに大きく無い鞄を出す。観客の「コイン?」「あ、あのカップ?」と言う発言に「ノンノン」とか大仰に首を振ったあと、鞄を開けると若干斜め気味にディスプレイされた色とりどり未開封バイシクルデックが52種類。

観客Aに好きなカードを1枚言わせ(7D)、観客Bに適当にデックケースを「どれからどれへ?」と二つ選択させます。選ばれたデック(緑と変なピンク)のみを卓上に取り出し、未開封なので密封されている事を示した後、Aに緑デック、Bにピンクデックを渡してあけてもらう。Aにさっき言った7Dを取り出してもらうように言うがそれだけ見つからない。で、Bにピンクデックをあけて卓にFUで広げてもらうと7Dが2枚。両方裏返すと、片方のカードのバックは緑。Aの選んだカードだけが密封デックを移動していたのだ!

現象サマリ:
1.Aがカードを選び(7D)
2.Bが未開封デックを二つ選び(緑とピンク)
3.二人にそれぞれあけさせるが、緑デックには7Dが入っていなくて
4.ピンクデックから緑バックの7Dが出てくる


やばい、色んな意味でやばい。冒頭のシーンだけで「うわ、やっぱこいつはモノホンのAHOだった!(褒め言葉) ヒャハッ♪」と既に腹筋崩壊気味だったにも拘らず、ラストのこの現象は不思議すぎ!なんだこいつ!全解説はしないんですが、一部だけこれについて少し触れていました。

「一応言っておくけど、Aの選ぶカードはノーマジシャンズチョイス、YES!(変なガッツポーズ) インマジシャンズターム!"フリーチョイス"!ィエーックセレント!ヤーッ!」まずお前のテンションが意味不明だw ルー大柴か。しかし実現方法も藪の中。くやしいっ…こんなクッキー好きの小デブに…っ!

いやしかし、Bicycle コレクターの真髄を垣間見ました。爆笑です。先日「Always Ambitious」 にてバイシクルの公式レインボーデックが発売されたと拝見し、ちょっと欲しいなあと思っておりましたが実にタイムリー。ただこの彼は今までの各演技でもそれぞれ違う色のデックを使っており、そういうのが発売される前からのリアルコレクターっぽいです。見所は「コレクションしているものは・・・デックなんですよ!」とか言うシーンの「ヒャハッ♪」とかいう絶妙にキモいリアクションですね。はにかむ演技(多分)がびっくりするほどキモいです!w (CV:釘宮)

しかしキモいのはひとまずおいといて、現象だけ考えてもかなりハイレベル。こいつならエニエニを美しく解決できるのでは無いかと思わせる感じでした。これに変なメカとか入ってないことを祈りたい。フリーチョイスだと言うのを信じるとすると、残る任意に選ばれる二つのデックの中身を、ある限られたタイミングでどうにか操作しないといけないのですが、見当もつかない。Bのデックチョイスについては触れてなかったので、そこで何らかのマジシャンズチョイスとかを使うのかなあ・・・。しかし言葉で誘導するまでもなく、Bさんは両手の指で「じゃあこれとこれ」とかすぐ指してたし、演者の「好きな色なの?」に対しても「ここのテーブルクロスが緑だったのと、私の家のカーテンが薄いピンク」とか、そんな理由でしたしねえ。謎だわ。



・KABUKI
手元でデックをもぞもぞやったかと思うと、南京玉簾のように4筋のカードでのブリッジのようなものが手元から伸びる。そのあと左手で蜘蛛の糸と紙吹雪を散らして歌舞伎(っぽい)決めポーズと決めボイス「イィィエッハァー♪」(としか聞こえない)。


「日本のゲイシャの映像で見た、細いスティックが連結されたやつ、あれをカードでやってみようと思いついた。そして日本と言えばフェイスペイントの歌舞伎だが、マクブライド(註:多分ジェフ・マクブライドのこと)の演技も参考にした」と珍しく神妙な顔で語っていましたが、マクブライドも若干微妙な部分ありますから!w つか日本と言えば歌舞伎なのですか、北欧の認識は。芸者がやってた、というのは多分何かの間違いだと思います。

カードは想像通り、エレクトリックデックっぽい工作が施されているのですが、ハートとダイヤだけで構成されており、白地とあいまって、不覚にも「意外と綺麗だ」と思ってしまいました。まあそのあと、怪しいキメボイスと髪に紙吹雪数枚が挟まっているという間の抜けた風体とで現実に戻されましたがw なぜにエニーカードアットエニーデックじゃなくてこれがトリネタ…。まあ彼らしいと言えばそれまでなのでしょうけど。

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とにもかくにも物凄く素敵なDVDでした。不思議な上に面白いって、どんだけ素敵な人なんだ。ほんとに続編出してくれないかなあ…。