教授の戯言

手品のお話とかね。

たっクロ2009

(前回の同タイトルに加筆修正をしたものです)
去る10月18日(日)、「たっぷりとクロースアップ」第27回に参加。今年は結構面白くて、参加して良かったと素直に思いました。当日直前までまた「オルタ」をやって、戦友の遺書を読みながらグスグスやっていたのです。そんな中メールが届き、「いいとこなのに誰だよまったく…」と思って見たら高校の後輩君からの(かなり早めの)「着きましたー」メール。これを貰わなかったら、会自体を素で忘れるところでした。Tさん、ありがとうございました。

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■庄司タカヒトさん■
千円札に通るリボン/ロープの結び目が消える/ロープを飛び移るハンカチ/ロープの小指抜け/色変わりシルク/タイムボード?/ライジングカード/ダイムアンドペニー的ななにか

今年の庄司さんはあまりわざとらしさもなく、観客との応対も多くて、いい意味で肩の力の抜ける演技でした。なお非常に反応の良い男女の観客がいらっしゃり、以降を含めて今年楽しかったことの何割かはあの方たちのおかげだと思います。おかげで私も含めて他の人たちも、重ねて演者に突っ込んだりできたことが、ショーとしての楽しさを増していたんだと(後から)思いました。L&Lじゃありませんけど、ああいうのは重要な気がします。ちなみに私は分かっててもナチュラルに驚く自信があります(主に演技の)。…パフォーマンス方向に行ったほうが良かったのでしょうか。

▼千円札に〜は菅原さんが作りそうな感じでした。漢字の「日」みたいになっているスリーブに千円札を入れ、真ん中の部分に普通のリボンを通すものです。多分スリーブの中でリボンが頑張っているんだろうなあ。▼ロープを飛び移るハンカチは多分ギャグでやっていると思うのですが、一緒に行っていた後輩くんが「あれはどういうことなんでしょうか」とか首を傾げていて面白かった。「トリックが分からない」のではなく「どの部分が不思議なのですか?」という意味ですけれど。基本的にマニアしか来ないとはいえ、庄司さんから「こういう短いのを使ってるんですね。はい。」とか演技中に言い出すのは私も理解できなかったけれど。演技なのか楽屋ネタなのか切り分けが難しいイベントです。▼色変わりシルクは左手拳の中にハンカチを押し込んでいくと違う色になるというやつなのですが、反応のいい女性がいたおかげでマジックになっていた気がします。▼タイムボードは以前にもたっぷりと〜で見た気がしますが、今回は上記理由で成立していました。▼ダイムアンドペニー的なやつは最後に少し「仕込みを失敗していた」との事ですが、おそらくうまくいっていた場合は"演者が500円を出し、観客から20円借りて一緒に握る"→"「この中からまず500円を抜きます」抜いてみせて残額を聞く。「20円ですね」" → "「ではここから10円抜くと幾らですか」10円を抜く。「10円」「そうですね」" → "「ではここから5円抜くと幾らですか」5円玉を抜いてくる。「!?…5円?」" → "「そうですね」 と言ってから1円玉が5枚出る" と言う流れだったと思われます。今回はラストに1円玉が4枚しか出てこなかったのですね。数字的には正しいけれどその内訳がまるで間違っていると言うコンセプトは非常に好きです。



■荒井晋一さん■
コネクション/$1→$0.5x2/パケットケースの中の予言/金と銀の鍵/パースとコイン(4種に→消える)/ナビゲーター

汗を拭ってドキドキしながらもカナリふしぎな事を見せてくれる御大という印象でしたが、それは今年も変わらず。やはり荒井さんのチョイスは非常に好みです。 「さっきのテーブルで、…トリネタ失敗しましてね…」とか悲愴な表情で入ってくるのは(失礼ながら)一回りして面白かったですけど。

先述の「失敗した」らしい手品。こちらでは大成功でした。「ナビゲーター」という売り物でもあるようですが物凄くフェアでふしぎ。

▼コネクションはあのくらいあっさり演じた方が効果的な気がしました。"物凄い不思議"ではなく"あれ、おかしいな"くらいが適切なトリックかもしれません。▼「$1を握るとハーフダラー2枚に、その逆も」というやつは恐ろしく綺麗だった。特殊なギミックコインを使っているのだと思うのですがいやはや。間違いなく渡せないと思いますが、あの一瞬のきらめきのためならコインマジックをやってもいいなと思いました。▼続いてのパケットケースを使って観客の選んだカードとの一致も面白かった。ただこれに関してはちょっと動きがもにゅもにゅしていた感が。現象自体は不思議です。▼鍵についてはあっさり変わりすぎて正直なところ不思議感がありませんでした。ちょっと持ち方が…。▼例の硬貨変化現象。これは鮮やかでした。欲しいけれどなんと言う名前なのかが分からない。…あれ…、ピュアスライハンドだったらどうしよう…。▼「ナビゲーター」については先のテーブルで失敗したとの事ですが、ここではうまくいっており非常に不思議でした。"デックの中の適当な枚数を観客に渡し、任意のカードを覚えてもらう" → そのパケットをシャッフルしてから演者に返す → "バックの色が違うナビーゲーターカードを1枚取り出して、観客のカードを口頭で当てる" → "ナビゲーターカードを表にすると観客の選んだカードと同じカード"
あれ、書いててなんか詳細を忘れていることに気づく。いやしかしぞくっとする不思議でございましたよ。荒井さんマジパネェっス。



■坂井弘幸さん■
4コインズプロダクション(URL)/コインズトゥグラス/絵札の集合/4Kと2Joの変化/ハンカチを使ったカードの予言→4Aプロダクション/ダックチェンジによる4A→4K/2種の予言/ワールドツアー/動物カード(一致現象)

拝見するたび思うのですが、日本人プロを一人呼べるなら迷いなく坂井さんをお呼びしたいくらい好きです(Dr.レオンはちょっと勇気が要るw)。スライハンドもかなり好きなのですが、メンタルをおやりになる時が本当にいい。私に知識がないせいもありますが、まるで追えません。あとは所作一つ一つが"マジシャンです!"って感じのしなやかさが素敵。

今回、演者の手元が若干見えづらいという状況を、自らが机にブリッジすることで解決していたのには笑いました(観客席に背を向けて、そのまま後ろに反り返ってテーブル上に頭をつけ、胸の上でカードをカウントする形)。 「若さをアピールしようかと思いましてね」 …確かにお若いなあ。カウントミスするも「えーと、ちょっと省きますw」で流せるあたりが凄い。

▼手元のメモに「チェンジきもい」とか書いてあった。コインを入れ替える時の鮮やかさのことだと思われます。▼何気にカードマジックも非常にハイレベルですよね。無茶苦茶な技法を使うわけではないですが、難度自体は高いやつも多く、カードマジックの練習好きにはたまりません。▼ワールドツアーは、後日ついつい買ってしまいました。



■Yuji村上さん■
駄洒落マジック(クマ→ペンギンとペンチと…)/4Kのツイスティング現象/4Kと4Qのペアが入れ替わり→4Aに/MEOTO予言

村上さん登場までの繋ぎの時のお話。坂井さんが「村上さんの秘密を一つお教えしておきましょう」で語った、"本名は村上ゆうじではない"ことにまず驚愕した。前日に色々なマニアやプロを唸らせたという、完全分離するリフルシャッフルは拝見できず。なお、脱力系駄洒落マジックで油断していたら片手でのハーフパスなどの各種変態技法も織り交ぜるという、色々凄い方でした。レクチャーノートはゆっくり読んでみたいです。しばらく経ってから、数年前のたっクロで、キリとかを使った駄洒落マジックを披露されていた方だと気付く。あの日のイベントでは、村上さん演技が一番面白かったなあと。

▼ペンキを拳の中に入れてもにゅもにゅするとペンギンになったりペンチになったりを3段階やるわけですが、私はもうこういう駄洒落マジック大好きなのでそれだけでOKでした。▼4Kのツイストはワンハンドでとんでもないことをしており、さっきまでの駄洒落押しが嘘のようなテクニカルぶり。真似できません。▼4Kと4Qをそれぞれスートで揃えて置いていくがKとQが分離、またやってみましょうと言うが、Qかと思われたほうをみると全て4Aに。これは何と言ったらいいのか。どうしても色々頑張っている感じがしてしまって、終わったあと「ああ、だからあんなに大変そうだったんだ…」とか思えてしまいました。現象はオイルアンドクイーンぽくて不思議なんですが。▼「MEOTO予言」これは非常に不思議。予言のカードを2枚、卓上に立ててから2人の観客にそれぞれ1〜26の奇数と27〜52の偶数を選んでもらって、その枚数目のカードが予言されているというもの。
ちょっと思うのが、どこまでだったら観客は「数字を自由選択した」と思えるのだろうかという点。「16から18の間で奇数」とか言ったらそれはもうあからさま過ぎてどうしようもないのですが。今回の村上さんのくらいが限度ですかねえ…。



■ゆうきともさん■
1000円硬貨と10円/OTW系2段

ネタ数としては少なかったですが、トリネタにはあっと驚きました。時間がかかるのでいわゆるクロースアップ向きの演目ではありますが、非常にふしぎだった。ギャフカードなのかなあ。レギュラーだったら吐く(想像処理限界を超えたことによる嘔吐)。「手はあんまり大きくないんですよ」と以前伺った気がしますが、指は長くてやはりマジシャンぽい所作だなあと思った次第。ゆうきさんはいつ見ても物の扱いが綺麗。これがカンタンに出来そうでいて自分ではまるで出来てないんですよねえ…。

▼自分でメモしておいて1000円硬貨の方がどんな手品だったか記憶が無い。▼Out of This World系というのは最初は赤黒それぞれ5枚でやるのですが、後段のやつがかなり不思議。観客abにそれぞれ赤担当黒担当とし、ゆうきさんが取り上げたカードが自分の担当色だと思ったら自分の前に、そうでないと思ったらゆうきさんの前に置いていくのですが、最終的に赤担当の前には赤が、黒担当の前には黒が揃う。ここまではいいのですが、この後、では違うといったやつは…とゆうきさんの前の山をスプレッドすると…という。正直ちょっと気持ち悪かったというか、上手いメンタルってこういう感じなのかなと思ったりしました。上の総合感想にも書きましたが、真ん中の山が特殊なギャフではなく、完全に検め可能なものだったらもうやばいです。



■守屋一朗さん■
セッティング/シルバーアンドカッパー/オバマデック/ハシ/四字熟※/カードの入れ替わり

今年の守屋さんは凄かった。何が凄いって、いつも通りのいんちきだけでなく、カナリふしぎな事もやっていたから(それが普通という説もありますがw)

▼「ここの皆様は…特別でございますよー!?」と言いつつ、演技開始してからセッティングを始めていたのに一同爆笑。「前のテーブル、演技が押してしまいましてねー」 とはいえそんな特別ってw▼SCは実に王道な使い方でした。▼「なぜこのデックは缶に入っているか分かりますか」から始まる脱力系マジック「オバマデック」w よく思いつくものです。▼カードの入れ替わりについては、普段の「いんちきでございます」からは程遠い、かなり骨太のトリック。観客の選んだカードのトランスポに加えて、折り目のような線が、ライターであぶると最終的には消えるという、セロあたりがやりそうなマジックでした。…そういや最近セロって特番やってましたっけ?しばらく目にしていない気がします。



■二川滋夫さん■
ワンコインルーティーン/SCB+ハーフダラー2枚のトランスポ/コインボックスルーティーン/カード2種(赤黒系/シール付カード当て)

今年の二川さんは動きがキレてらっしゃった。コインボックスって上手い人がやるとあんなにキモいんですね(純然たる褒め言葉)。

▼毎度のことながらワンコインルーティーン、特にクリーンナップがキモい。普段見ていてもなおキモいとは。二川さんって実は寄生獣とか右手にいるんじゃないだろうか。▼めまぐるしくトランスポ。▼コインボックスって不思議なんですね。あまり見たことが無かったのですが。▼二川さんがたまにやるシール付のカードあて、やはり不思議でした。借りたデックでやるのですが概略は以下。
観客にデックを借り、観客自身の手でよくシャッフルしてもらう。演者はカードを受け取り、観客に真ん中あたりのパイルを残してもらい一枚ずつ卓上に裏向きのまま置いていく。適当なところでストップをかけてもらう。「私も、勿論あなたも、誰もこのカードが何かというのは分かりません。この裏面にシールを貼ります」で、小さな丸いシールを目印に貼り、デックに戻して表向きにシャッフルする。表向きにスプレッド、演者はその上に人差し指を走らせ、観客にストップをかけてもらう。指を下ろしたところの3枚を残して片付け、観客に選んでもらったカード以外の裏を見ていくとシールは無い。観客の手に残ったカードの裏を見ると…。
先日習っては来ましたが、大胆と繊細が面白いバランスでかみ合った形です。寝る前に練習してみております。



ふじいあきらさん■
ハンバーグ/SSからのカードボックス/アンビシャスカード/トライアンフ/時計/タバコの貫通/「街角で遭遇した手品シリーズ」ダイアゴナルレフトハンドパーム→カバーパス/コインルーティーン

何回トランプ吐くんですかw なおドンずべりだったという「街角の風景シリーズ」はふじいさんならではといいますか、どれも変態性たっぷりでステキでした。

▼のっけからデックケースにハンバーグが乗っかっててびっくりする。ボトルプロダクションもそうなのですが、ふじいさんはミスディレクションというか視線誘導がさらに巧みになった気がします。いや、気のせいかもしれないんですが、本当に自然。▼SSとか、追えないことは無いのですがまるで気にならないレベルですね。あれの1割でもいいから上手くなりたいです。▼アンビシャスとトライアンフはふじいさんらしいといいますか、クラシックプロットって名手にかかると本当にカッコイイなと思える出来。ゆうきさんが名指揮官だとするとふじいさんは渡りの傭兵というか。自分で例えて意味がわからねーw▼タイムマシーン。あまりギミックを知らないのですがなんなんだあれ。きもいです。▼「街角手品シリーズ」は真偽はともかく、私もお願いはしてみたいです。しかし、ナンですね、彼くらいの名手だと、技法だけ見せてもらってもきっと楽しいです。アッカーマンの「Advanced Card Control Vol.2」(※)みたいなやつ、ふじいさんが出されることを願います。  (※アッカーマンが、変態的なカード技法を延々と解説してくれるビデオ。なお以前ふじいさんとお話した際に、「いやあ、あれ、たまに無性に見たくなるんですよー」と仰っていて、「ああ、そういう人向けのバイブルなんだ」と無意識に理解した)