教授の戯言

手品のお話とかね。

Ramón Riobóo(訳 岡田浩之)『Thinking the Impossible』日本語版

「緑の蔵書票」で紹介されて以降、「超・読んでみたい、でも英語で読むの超・めんどくさい」などと思っていたラモン・リオボーの『Thinking the Impossible』(通称『りおちゃん本』)が、日本語への完訳の上、遂に発売と相成ったそうで、めでたくて震撼。ついでに10冊ほど注文しました(実話)(勿論、いくら私がぼっちでも、自分一人用に10冊というわけではなく、東京で会えるお友達用も含めてではありますが)。また追加注文もします。


内容がどういうものかというのは、「緑の蔵書票」でお読み頂きたいのですが、読んで、幾つか演じた身として言いますと:読んだら「そりゃそうですわよね」というレベルの単純な理屈を、イヤラシイまでの構成で極めて巧妙に隠匿しているもので。「ああん、何その華麗なカード捌き!素敵!抱いて!」の対極というか、「え、何もしてないし、どこにもカードを知るようなタイミングもなかったよね。手品はいつ始まるの?」「ククク、馬鹿め、もう終わっておるわ」「ナ、ナニイイイ!」「貴様の選んだカードは、(いいともの客風に)ダイヤの9ですね!!」「ッ!ウヌウウウウ!」みたいなトリックばっかりなのですよ。……何言ってるのか意味が分かりませんが、なんか"気配がないタイプのカード当て"はキモい、ということだけご理解頂ければそれで結構です(投げっぱなしていくスタイル)。いや、全トリック概要と感想書こうと思いましたが、それはやり過ぎというか、そのうちフレンチドロップあたりが書いてくれると思うのでそれで結構です。(投げっぱ(ry)


思い起こせば遥か前、訳出初稿の一部を見せて頂いたのが2013年末、マイアミでひとり孤独にショッピングセンターに向かう途中の、冷房効きすぎのバス車内だったのですが、なんというか、読ませる文章といいますか。「この手品、絶対不思議だ」と、実演を見ずに読んだだけで思えるというのはとても凄いなと思いました。超キモい。気持ち悪かったのはバス車内で下向いてスマホをずっと見ていたから説もありますが、それはさておき。書いてあるものをありありと手品映像に変換出来るという能力も多少キモいとはいえ、大部分はうまく、そして綺麗に訳してくださっている訳者さんの手腕でしょうね。なお私見ですが、あの時点では多分、本書から幾つかチョイスして抄訳だけするおつもりだったんでしょう、きっと(遠い目)。まさか2年半後にハードカバーの完訳版を出すなど、まったく思ってもいらっしゃらなかったに違いありません。だって私は思っていませんでしたし。グッジョブ。


なおワタクシもこっそりと、カードマジック専門の拙サークルで本書のトリックを演じたことがあるのですが、マニアが「え、ど、どういうこと?なんで?」になっていたり、二川さんまでが「え、これホントに混ぜちゃってもいいんですか」(「凄い!これ、りおちゃん本で読んだ観客の反応通りだ!」)であり私ニンマリとか(最低)。なんか手品がうまくなった気分になれましたね。うへへ(悪い顔)。



フルデックやパケット、ギャフを使うものなど幅はあるとはいえ、基本的にカード当てメインの本ではあるので(マッチング系もありますけど)、「カード当ては要らんです」「カード当てに親を殺された」みたいな方には全くオススメ出来かねますけれど、「ひとつふたつ、暗器の如きカード当てを知っておきたい」「『うわキモイ!手品も!お前も!』って言われたい」というような方には激しく推奨。


当面手品ショップに卸す予定もないとのことで、入手経路はかなり限定されそうです。以下のページからカード決済するか、訳者さんに直メール&銀行振込、もしくは訳者さんを直接ストーキングして拉致、「わ、分かりました、売ります、売らせてくださいッ!ああああ!」って言うまで、裸で逆さ吊りにした上、目の前で百合系ブックスを焚書するなどすると入手出来ると思います。なお訳者氏は私同様、アマガミでいうと七咲に弱いです。七咲抱き枕とかを送りつけ(ry


ご興味持たれた方はこのページを読み、それからここ「Thinking the Impossible 日本語版:BASEサイト」で、ありったけ買われるといいと思います。まあ趣味の手品本の訳でハードカバー本を出してしまうたぐいの人間に共通でしたが、「お互い、もっと商売うまくなりたいですね」と思いました。心の中で。「でかい黒字とか望んでないんだ、赤にさえならなければ!」という姿勢は、やはりちょっとイカンですね。DXエディションPDF2万円、とかしれっと出してみたいです(私の願望)。


あーでも、やっぱ出来上がった"本"という物体は愛おしいです。本書は内容の面白さもさることながら、センスのいい装画に、サラサラとした手触りのダストジャケットで、おしょうゆこぼすと即アウトではあるのですが、このすりすり感がたまりません。すりすり。ソフトカバーでは味わえない、とじたときの"ぽむっ"ってのがまた。じゅるり。……おおっとあぶない、早速しみを付けるところでした。


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読者からのよろこびの声:
『Thinking the Impossible』に出会うまでの私は何をやっても長続きせず、唯一の趣味だった手品も、招いて頂いた町内会の演芸場を豚の臓物まみれにしてしまったことで、町内の方々に激しく叱責されて以降、トランプを手に取るのも恐ろしくなってしまいました。「豚の臓物を最低20kgは使わないと、カードは当てられないし……」と悩んでいた私に差し込んだ一筋の光明、それが『Thinking the Impossible』のステ看板でした。藁にもすがる思いでそこに書かれていた番号に電話すると、「事務所まで、丸腰で来てください」とのこと。事務所に行くと一冊の本を見せられました。そこにいた京都弁の男性の説明を聞いて愕然。驚いたことに、これさえ読めば、カードを当てるのに豚の臓物は要らないというのです。毎回知り合いの肉問屋から高額で臓物を仕入れていたのが馬鹿らしくなってきてしまいます。しかもなんとこの本、今なら一冊、たったの300万円だというのです。これまで手品にかけてきた金額の1/10以下という安値に驚いてしまいました。早速一冊購入して手品を再開してみたのですが、いままでの反応が嘘のように会場が盛り上がり、嫌な顔どころか楽しんで観て頂けるようになりました。来月にはラス・ヴェガスのホテル・ベラッジオでワンマンショーを行うことになったので、ちょいと小粋に「シュッとやったら挟まるやつ」なんか演じてこようと思っています。私は思うのです。ウケが取れないマジシャンに足りないのはスキルではなく、『Thinking the Impossible』なのだと。これさえあればカード当てに豚の臓物や牛の頭部、魔法陣やろうそくなどを揃える必要もありません。そして私はこう言うでしょう。「きみ、なにかひとつ見せてやれよ!」とね! (東京都 32歳 公務員)



読者からのよろこびの声:
『Thinking the Impossible』に出会うまでの私は、虚弱体質を絵に描いたような大学生でした。iPadを持ち上げただけで脱臼、月刊アフタヌーンで骨にヒビ、6缶入のビールパックで骨折などの毎日。もう、日に30時間の鍛錬という矛盾や、未認可薬物を使ってドーピングするしかない、と思い始めたとき、楽天のオススメお取り寄せ・地方名産品カテゴリで、スペイン名産品ということで偶然注文したのが、『Thinking the Impossible』でした。届いてみてびっくり、不思議な手品が載っているだけでなく、少しずつ読み進めていくうちに、いままで本書を床に置いて読んでいたものが、いつの間にやら小指と薬指の2本だけで保持出来るようになっていたのです。それだけではなく、これまでトランプを持つ度にひどい関節痛に悩まされていたものも嘘のように消えました。更に肌ツヤもよくなり、近所の奥様方から「あなた、最近どんな化粧水使ってらっしゃるの?」と言われるほど。読み始めてから3ヶ月ほど経ったいまでは手品のレパートリーも増え、先日はふと立ち寄ったグランドジェナス北壁を、両手の小指のみのハンデプレイで登頂に成功いたしました。全国の虚弱体質の皆さんに言いたいです。体質改善に必要なのは、にんにく卵黄でもアブフレックスでもなく、『Thinking the Impossible』の重さです。片手で30冊を保持出来るようになれば、大抵の観客は一撃で倒せます。握力×体重×スピード=破壊力です。ハロー、マッスルワールド!グラッツェ、ラモォン! (東京都 26歳 手品ブロガー)