教授の戯言

手品のお話とかね。

水と油


12日火曜日、所属しているカーディシャンズクラブの2006年最後の活動があり、会そのものはかなり脱線しまくりで終わりました。「ビジターってのは誰がやってもラストのこの部分がね、うまくいかないね」「イキナリ高速になるよね」「ああ、そういや高橋(ゆうきとも)さんのさ、ビジター。あれ結構すっきりしてた気がするんだけど」「こうだっけ」「…いや、それはなんか違わない?それじゃなくて、その後発表したやつあったでしょ」「そうだよねえ」で、二川さんを始め誰もその手順を思い出せずw 


ジェニングスの古典"ビジター"には、カードの移動(消失)&サンドイッチという、現象そのものはかなり視覚的・意識的にも面白く、星の数ほど改案があるトリックでもあります(ちなみに私が大学のサークルで一番初めのほうに習ったものでもあります。今思えば物凄い入り方なんですけれども)。が、実はあまり好きでもなく滅多に人前で演じることはありません。私見ですのでビジターマニアの方には申し訳ないのですが、結局このトリックを私があまり好きでない理由は「デックを使う意味づけが弱い」点に尽きます。別に絶対いい悪いという話ではないという前提つきですが、「マジシャンズムーブ」が「マジカルゼスチャー」に準ずるように見えるのであればいいのですが、単に演者の都合でする「不合理な動き」に堕してしまっているとこれは間違いなくダメだと思っています。ビジターは私が見た限りそういう演技をされる方が多い傾向のように思えます。


さて。ビジターで言えば、本来的に必要なのは4Qと選ばれたカード(SC)の計5枚でいいはずなのです。右側に表向きの赤いQが、左側には黒いQがそれぞれぴたりと重ねて置いてある→黒2Qの真ん中に裏向きにしたSCを挟み揃える→赤2Qの間には何も入挟まっていない正真正銘2枚であることを示し、揃えて卓上に戻す→黒い方にマジカルゼスチャー→SC消失→赤いほうをスプレッドするとSCが出てくる→揃えてもう一度マジカルゼスチャー→SC消失→4Qを揃えて指パッチン→スプレッド→赤Qと黒Qに挟まれた状態でSCが出てくる といった感じでしょうか。


勿論フルデックを使わない分少し変更してありますが、現象としてはこういったイメージです。よくよく思い出すとヴァラリノの演技で同一ではないものの似たコンセプトのものがあった気もします。私が見たのはビデオですが、おそらくこのDVD所収のはず。未見の方は是非一度ご覧になるといいと思います。かなり見た目からしてあほなこともやっていますが、ポイントポイントでマニアックながら怪しさの無いステキムーブも盛りだくさん。ビデオ専用のネタかと思ったら、普通にショーで演じているそうですし、一見の価値はあるかなと。私は出来る気がしませんが…。<http://www.frenchdrop.com/menu/video/vallarino.shtml


まあそんなわけでビジターって難しいねというお話と、終会後初めて二川さんと二人で有楽町のお店で飲み、ツイスティングジエーセスのバリエーションと、二川さんのやられているオイルアンドウオーター(OW)3段を教えて頂きました。正直演者が延々と続けるOWは嫌いなのですが、2段目と3段目はお客さんに参加してもらえるタイプだったので、この3種は近頃練習をしています。…戦国ランスの合間に。

備忘を兼ねて現象:
第1段:
1.表向きのパケットを取り出し、一枚ずつランして行き赤黒4枚ずつ計8枚がそれぞれ固まりになっていることを示す
2.裏向きに戻して上半分(赤)を右に、下半分(黒)を左に置く
3.右→左の順で上から一枚ずつとって左右の真ん中に8枚の山を作る(赤と黒を交互に混ぜるイメージ)
4.30分待つ
5.赤と黒4枚ずつに分かれている

第2段:
1.お客さんに赤4枚を渡し確認&裏向きに保持してもらう。演者は黒4枚パケットを右手に裏向きにピンチグリップ
2.演者は左掌を差し出し、お客さんに一枚おいてもらう→自分も一枚その上に置く の順で、一枚ずつ掌に置いていき8枚の山を作る(赤と黒を交互に混ぜるイメージ)
3.45分待つ
4.赤と黒4枚ずつに分かれている

第3段(タマリッツの手順):
1.演者の右側にお客さんを呼び、両手の間で表向きにスプレッド。確かに赤と黒が4枚ずつ並んでいることを示す
2.お客さんにパケットを裏向きにしてもらい、第1段の2と3をしてもらう
3.揃えた物を受け取り、裏向きのままスプレッド、「赤黒8枚」で、「お客さん自身の手でそれぞれの山に分けて」、「お客さん自身の手で混ぜてもらったこと」を再度確認した後お客さんに返す
4.120分待つ
5.赤と黒4枚ずつに分かれている

第1段は楽なのですが、第2段は度胸が、第3段は技術が要るのです。特に第3段は例のコントロール技法を使うのですが「どう見ても何も操作していない」レベルまで高めるのがちょっと困難だなあというのが正直なところ。別の技法で代替出来なくは無いのですが、効果が半減してしまうのは否めません…。精進あるのみですね。


余談。
OWでまぜまぜをした後、「しばらく経つと分離するんだよ」と言うんですが、長時間漬込が必要な部類のメニューを紹介する際の料理番組のように、机の下からデュプリケートのパケットを出してきて「で。ここに2時間寝かせたカードも用意しておりまして。ほら、分離してますよね!」と言いながらそっちを示すいうギャグをやっていた時期がありました。懐かしい。私の手順メモが必ず○○分待つ、というのがあるのはこのギャグをやっていた名残だな、と自分で気づきました。勿論そこのステップは飛ばしても現象は起こりますw

余談そのに。
その飲み屋で後から入ってきた中年男性3人のうち1人が二川さんの存在に気づき、同僚に「二川さんがコインマジックの偉いセンセイである」という事を説明していたのですが、続けて二川さんに挨拶しつつ「ワタシ、松尾(Mr.マリックの本名)の同級生でして」と。世間の狭さを感じた一瞬でした。