教授の戯言

手品のお話とかね。

箱根クロースアップ2011(裏) 前編

ということで、去年に引き続き、箱根クロースアップの時期ということで行ってまいりました。いや、なぜだかその箱根という場所は、世間一般で言うところの神奈川県足柄ではなく、石川県金沢(通称:新谷地方)だったんですけれども。詳細は後述。以前私が神戸に行った折、Twitterにてバー「shade」を紹介してくださった一人、プロマジシャンのヤマギシルイさん(金沢在住。自称・顔はいいけど口が悪い)に、今回手品に限らず色々お世話になりまして、もう本当にお礼のしようがございません。…じゃあ、しませんw



▼4/8(金)曇天、有給をとって石川県金沢に。私にとって石川というのは「地酒が美味しい」「いつも利用している酒屋がある」「海産物が美味しそう」「まつや とり野菜みそ」「新谷地方」「兼六園」「小松基地」「冬、個人が趣味で能面を彫ったりする」「CULL先生がいらっしゃる」「新谷良子さんとか能登麻美子さんとか寺島拓篤さんなど声優さんの地元」「8番らーめん」などのイメージであり、「能登半島って日本列島持ち上げるときに指引っ掛けるのに便利そう」とか、そんな漠然としたイメージしかありませんでした。

▼まず金沢駅構内のジャーマンカフェでPCとパンフを見ながら作戦会議(一人)。気がつくと「シュタインズ・ゲート」の第1話を見終わっていましたが「…はっ、何で金沢で自宅と同じ行動をしてるんだ!」と我に帰りました。
とりあえず金沢から上の方に行くと和倉温泉というのがあるらしいので、"若者らしく温泉入って海産物に舌鼓を打ち、べろんべろんになってから宿(金沢市内)に戻る"という計画を立てる。和倉への行きがけに、以前TV局の友人から「聖地巡礼してきて」と、個人的にも大好きな「とり野菜みそ」の工場直営レストランがあるのを聞いていたので、そこで腹ごしらえしてから温泉へ、というオプショナルツアープランに。ついでに東京のお寿司屋さんの大将に「面白いから行ってごらん」と言われた"忍者屋敷"こと妙立寺に見学の予約電話を入れ、ホテルも確保、荷物をコインロッカーに預けていざ出発。

本 数 が 少 な い。喫茶店を出たの9時45分だったのですが、和倉まで直で行く電車、11時20分までこない。久しぶりの「1時間に1本ワールド」がそこに。改札が自動改札じゃなくて駅員さんがハンコ捺してくれる。多分この辺で一番大きな駅のはずなのに、ホームに人が殆どいない。東京都心部と同じってことはないけど、本数は大阪くらいじゃないのかなというイメージでいた事の甘さを感じ始める。和倉に行くのは諦め、まずはとり野菜みそ鍋食べに、金沢から電車で一本、40分くらいのところにある横山へ向かう。きょうじゅぶらり途中下車というかそこが目的地になりましたの旅。車内でパンフを色々読み、ああ、なんか風雅な土地柄だな金沢は、とわくわく。

▼横山到着。雨が降り始める。人がいない。…住宅はたくさんあるけど本当に人がいない。「ここ、現実なのかな」とか思いながら5分くらいとぼとぼ歩いて大通りにでると、そこそこ車は走っていた。まつやレストランにて豚の薄切り入りのとり野菜みそ鍋を賞味。大変美味しゅうございました。うっかりいつもの癖でご飯(小)でお願いしてしまったのだけど、(中)以上にしておくべきでした。今度自宅で作るときはああいう具材も入れてみよう。という30分を過ごしてすぐそのまま横山駅に戻る。分かっちゃいるが誰もいない、なにも通らない。次の電車まで30分以上ある。小雨だし物音がしない。あまりに暇で寂しくなってきたので、元より全部見るつもりはなかったのですけれど、PCに入れてきたあすぱらチャリティー動画を見始め、ついでに無駄に感想を書き始める。金沢駅に着くまでに10人分書き終わるくらいの時間がありました。

▼和倉を断念した私にヤマギシさんから、「金沢市内に湯涌温泉というのがあるので、そこに行かれたらいかがですか、ていうかむしろGO。探せば数少ない路線バスが出ていますw」という素敵メッセージが入っていたので行くことに。金沢駅前からバスで50分くらい。
15時前くらいに到着。… 人 が い な い。というか何か、金沢はもしかして人口少ないのか(実際少ないようではありました)。夕方、人気が無い冷え始めた温泉街で立ち尽くすも、とりあえず寒いし温泉入ろうと歩き出す。あることに気付く。やたらとアニメ絵のポスターが貼ってある。見てみるとタイトルが「花咲くいろは」とあり、どうも金沢が舞台のものらしい。「これはあれか、true tears(富山が舞台)みたいな、ご当地アニメか。東京帰ったらチェックしよう」と思い歩き出す。途中で年配の方とかとすれ違ったが、その後明らかに聖地巡礼をしていると思しき、カメラを持ったヲタ系の人たちも2人発見したので一応人はいるんだ、少ないけど、と安心して温泉へ。温泉自体は想像より小さく、露天風呂もなく、うん、なんか銭湯みたいだったですw 入浴の最中くらいに小雨が篠突く状態になってきて、傘を持っていないことを思い出して鬱々とした気分になる。体重にショックを受ける。帰りのバスがこれまた17時過ぎまで来ないので、畳の休憩室で地サイダー飲みながら感想文の続きを書き始め、しばらくしてからバスで金沢市内へ。

▼片町のホテルに荷物を置き、なんかもう、このまま寝ちゃおうかなというくらいくてっくてになっていたのですが(リアルにこの日「かーっ、2時間しか寝てないわー、実質2時間しか寝てないわー」(AA略)でした)、さすがにヤマギシさんにもご挨拶しないとなあと思い立ち、ひとまず彼お勧めの寿司屋に行ってみるも満席で40分くらい待ちということで断念。彼のバーの場所を確認してからまん前で「お寿司屋さん満席でした。お腹がすいて力が出ないのでラーメン屋にでも行こうかなー」というメールを打って一旦ホテルに戻るとヤマギシさんからお電話を頂き、「いまどこですか?え?店の前…の近く?とりあえずこっちへ。え?8番ラーメン?いや、せっかく金沢来たのに。フレンチでも」となり。初対面では"とっつきにくそうな人"を演じてみようかなと思っていたのですが(特に意味はない)、なんか出会いがこんなんで「あ、きょうじゅさん?」「あ、はい、こんばんは。…お腹が空いて死にそうです」 …食いしんぼキャラか! 「ああ、近くにフレンチあるんですよ、フレンチ大丈夫ですか?」「はい、問題ないです」「僕は一旦店に戻ります。またあとで!」「え?あ、はい」 そのままフレンチレストランに放り込まれて、何故だかそのままコースを頼み、1時間強、美味しいフレンチに舌鼓を打ち、「ダイエットを決意した夜がフレンチのコースって、そんなの絶対おかしいよ」と思いつつ堪能してしまう悲しさ。中でも鯛のポワレが非常に美味しかった。ちなみにカクテルで「林檎とわかば」というのを頼んでいたのですが、会計直前にそれが店の名前でもあることを知る。一点言うとすればコースの終わりを明確にして欲しかった。コメントが無い状態で20分くらい暇を持て余していたので。ちょっと会話も出来て、そこのシェフの奥様がヤマギシさんとお知り合いで、店員さんがヤマギシさんかかりつけの歯科の職員さんとか、世間狭すぎですw 「お客様もあれですか、マジックとかされるんですか?」「とんでもない。手品なんてのは観るものですよ」



▼一旦ホテルに戻り、ヤマギシさんへのお土産を持って、いざ彼のバー「金沢STYLE」へ。「…じゃあ、マティーニを」とか言って、出されたものを飲んで、「…ふふん」とかよく分かってないけど通ぶる気満々だったのですが(マティーニは作り手のセンスと腕が如実に出るらしいのですが、ビールと発泡酒の区別がつかない私には分かりっこない)、「とりあえずマティーニを…」と切り出したら「あ、うち無いんですよ、すみません」と即座に出鼻をくじかれる。美味しんぼ的アプローチ、失敗。長い間確認したいことがあったのでそれを聞いたら「きょうじゅさん、そんなモン聞くために金沢いらっしゃったんですかwww」とか大笑いされる。あれは疑問に感じると思いますけれどねえ。なおヤマギシさんは私の同級生の塾講師に風体がそっくりであり、まるで兄弟だなと思ってニヤニヤする。

初めて彼のマジックを生で拝見しましたが、以前見た映像の印象とはそう大差は無く、カード捌きが綺麗。本人曰くもっと粗くしたいそうですが、そのままでいいのに。匂いとして桂川さん的な印象を受けた。「あーやれるもんならやってみてーですよ私もさ」ってやつです。とひさんが安心の安定度合いとすると、彼は安定的に死地に赴くというか。成立しているのでいいのですが、見続けると気持ち悪くなると思いました。ていうか夜更けにいらしてたお客様(女性)は気持ち悪くなってたw 連れの紳士が滅茶苦茶面白くて手品にも詳しそうで、会話も弾みまして。あとトランプや現象ではなく、演者を指差してから「…気持ち悪い」って言うと、演者が傷つくことが分かりました。勉強になります。

ヤマギシさんの手品は、ちょっとした腕自慢の鼻をへし折るには十分な技量・そして圧倒的な物量だなと思いました。延々とみるのも楽しみでもありましたが、よくよく考えると翌日手品バカ一代が3人揃うらしくて(とひ・ヤマギシ・その後輩)、私は早々にビデオカメラセットして、部屋でニコ動でも見ている方が幸せな気がするのだがどうかな、と思いつつ、本日のところは退散する。私は節度あるライトな手品好きなので。ダメ、絶対。



▼マジックバー「金沢STYLE」は、マジックバーとしては酒の種類は多そうなのだけど、ここの特色は正直酒だとかバーの雰囲気とかマジシャンの名前のカクテルがあるとかじゃなくて「無駄に濃厚な手品が大量に観られる」という点に尽きると思う。これは良し悪しがあって、手品マニアが「もう今日はマジで憂き世を忘れるくらい手品を見たいんだよ、マスター、なんか十個二十個頼むわ!」という場合にはもううってつけ。実にお勧め。お客様が少ない日なんかに行くことができれば、多分延々と手品観たり喋れたりします、間違いなく。この点は今まで行った中でも傑出。
一方で「手品やりすぎ」とも思いました。もちろん手品を見に来ている人もいるからニーズが満たされてればそれでいいし、ヤマギシさんとて酒作ってる時以外ずっと手品見せてるわけじゃないと思うのだけど…いや、見せてるのか?…見せてそうだなw まあ私は「手品を見に行った」ので、それでOKかと思います。カードは言わずもがな、コインやリングも堪能で、何よりスポンジボールがスピーディーだけどとても楽しかった。生で見てフラッシュゼロだったのは驚き。
とはいえ観客が妄想する余地が無いレベルでの不思議だし、そりゃ普通のお客様は気持ち悪くもなるかな、と。私は追えない部分も「この人はプロだし、…まあ変態だから仕方ない」という諦めだとか「まあ見えはしなかったけど、状況からあの技法を使ったなという類推手段」があるけれど、そういう防御策を持っていない非手品人が、あの高クオリティをあの分量で見せ続けられたら、バーの滞在時間内に年間安全被手品不思議量を超えてしまい、ただちに健康被害が出ます。危険です。「お酒が進まなくなっちゃいますね」とご自分でも仰っていた通り、もう少しホンワカした要素が入っていたり、観客が悩まないようにしてあげる方が"お店として"はいいんじゃないかなって思ったけど、私は楽しかったので"もっとやれ"でw 
口も回るタイプのようだし、カードのチェンジで「お飲み物は大丈夫ですか?」とかのメッセージカードになってるとか、なんというか不思議一辺倒じゃないそんな遊びみたいな部分が手品にもあったらいいのにと思いました。などとカードアンダーザボックスにものの見事に引っかかった悔しさをにじませつつ述懐。ヤマギシさんの視線誘導は極めて合理的でドク・イーソンを思い出しましたが、そういえばイーソンのノートに「バーマジシャンは、お客様に楽しくお酒を注文して頂くことが仕事です。手品を見せることが仕事ではありません」という名言があり、見習って欲しいやら見習って欲しくないやらw これは本当に自分でも悩む。落ち着いて飲めるバーは好き。でも、こっちが見たい時に好きなだけ手品を見せてもらえるのも好き。この辺で悩み始めると、結局家で酒をあけつつカップスの映像でも見て落ち着こう、となるんですがw 

とにもかくにも、ヤマギシさんはうまいだけでなく、プロなのにマニア要素満載、手品が好きでたまらないという雰囲気がある方です。手品好きな方で、金沢に行かれる際には、まず覚悟を決め、そして膨大な手品に対する心の防護服を着用の上、行ってみるともう、そこはマニアなマスターの素敵手品地獄が待ってますw

マジックバー★金沢STYLE マジシャン:ヤマギシルイさん

ちなみに宿(店から徒歩2分)から素敵なおねーさん紹介所が見えるような立地であったわけですが、大阪の北新地を思い出しました。コドモなのでああいう雰囲気にいつまでも慣れない。




そして問題は翌日の晩なのです。裏箱根クロースアップ2011、開催。